知教労さんのtwitterに,部活動の顧問拒否の結果が上げられていました。
転載の許可をいただきましたので,ご紹介させていただきます。

~知教労の中の人の 部活動顧問拒否 顛末記~

■プロローグ■
私自身がヘタレ人間ですので,うまくいかないかなと思い公言しませんでしたが,
(真由子氏)もすなる「部活動顧問拒否」といふものを男もしてみむとてするなり。
まあ,結果は「顧問拒否失敗した」なのだが。ちなみ運動部をもっていました。

2月,来年度の意向調査票が配布された。
部活の欄は第3希望まで書けるのだが,「希望しません」の選択肢はもちろんない。
私はそこに
「希望します 希望しません」と併記し,
希望しますを二重線で消し,希望しませんに○をつけた。
「選択肢がないのはおかしい」という抗議の意味をこめて。
希望欄の下には理由を書く欄がある。
私は「本業に差し支えるので」と簡潔に書いて,教頭に提出した。

■3月某日 校長面談■
校長

「希望しないってどういうこと?」

「そこに書いてある通りです。」

私は現在ツイッターで挙がっているような,
部活動に関する様々な問題点を懇々と説明した。

校長
「うーん,命令はできんしなあ・・・。××部
(活動をほとんど行わない文化部)はどうだ?」


「いや,あくまで希望は『部活動をもたない』です。
部活動が負担だからというよりは,やる/やらないの選択肢がない
のがおかしいと思い,『顧問をもちません』と言っているのです。」

その後は何もなく春休み突入。
「もしかしたらこれは4月1日に職員会議で強制発表パータンか?」
と思っていたら呼ばれた。

校長
「部活のことだけど,まあ,やっぱり××部(例の文化部)やってくれや。
お願いだ。子どものためだ。」

出たー!
金科玉条,伝家の宝刀「子どものため!」


「では1日考えさせてください。」
校長

「いいよ」

私は組合のいろんな先生に相談しようかとも思ったが,時間もなかったし,
「一歩たりとも譲るな!」という強硬派から,
「校長との関係を考えたら実を取ったほうが良」
という穏健派まで意見が出揃うと予想できたので,一人で考えることにした。


■論点1■
命令かお願いかをはっきりさせること。
職務命令なら受けざるを得ない(ただし活動は勤務時間内に限る)。
個人的なお願いなら受けない。
心情としては「お願い」はわかるけれど,ここは管理職と教諭という立場で
話をするということの確認。


■論点2■
勤務時間外の活動について。
鳥居裁判の判例により,勤務時間外に(たとえ顧問が自主的にでも)活動した場合,
「違法な命令」になる可能性と,「命令下」ゆえに,
子どもの怪我や事故,熱中症等はもちろん,教師の怪我や事故についても
校長の責任問題が発生しうることを認識しているか。


■論点3■
「子どものため」と仰っていたが,部活動の顧問を引き受けることは
本当に「子どものため」なのか。
今までの私の働き方を見ても,夏場は部活のあと校務・学年分掌の仕事を終えたら22-23時。
教材研究もままならないまま次の日の授業を迎える。
全く「子どものため」になっていない。

「子どものため」に顧問を頼むのであればそれは受け容れられない。
そして「子どものため」のような他者利益を金科玉条にするようなメンタリティーは,
それがあっという間に「お国のため」にすり替わってしまうリスクを含んでいることを
認識していただきたい。
(「それは子どものためであり,大日本帝国のためだよ○○先生!」などと言われた先生たちが,どれだけいたことだろうか・・・)
※この部分は校長には言ってません。


■論点4■
この学校の異常な長時間勤務の実態を認識しているか?
鳥居裁判の鳥居先生が倒れる前月の超勤が119時間。
この学校には私を含め,それを上回る先生があちこちにいる。
200時間超えの人もいた。いつ,誰が倒れてもおかしくない状況。

誰かが倒れてからでは,死人が出てからでは遅い。
校長先生は「仕事にきりをつける工夫を」と仰るが,自助努力には限界がある。
能力の差もある。現実的に,具体的に,仕事の量を減らしていただきたい。


■論点5■
部活動が過熱している現状について。
部活動に関する規制がなく,あっても形だけになっており,
部活をやりたい人がやりたい放題やって,そうでない人がそれに
巻き込まれるという構造的な問題が起きている。以下例を挙げる。

毎月のように行われる公式,非公式の大会。非公式は任意参加だが,
参加しなければ生徒や保護者から
「となりの学校は参加しているのに何で?」
と言われる。特に私設の大会は年々増えている。

「コーチライセンス制度」の問題。
「コーチライセンス」がないと,今後は協会主催の大会には,顧問がベンチに入ることすら許されない
=実質,コーチライセンスがない人には顧問を頼むことも難しくなる。
コーチライセンスは自腹を切って休日を返上してとらなければならない。

夏の大会前などは,土日の1日練習などを行うと,授業時間より部活時間のほうが長くなる。
それは本当に「学校」と呼べる場所だろうか?
「○○スポーツクラブ」に改名したほうがよいのでは?

その他様々な部活のマイナス面。
「部活壮行会」は一見華々しい行事だが,ほとんどの3年生が下級生の前に立つのに対し,
ごく少数の「部活ドロップアウト3年生」や「ユニフォームもらえない3年生」
前に出られず,下級生と同じサイドの隅っこで居心地悪そうに固まって座っている。

彼らはどんな思いで,前に立った同級生たちを眺めているのだろうか。
「俺は部活ドロップアウトした/ユニフォームもらえなかったダメな人間なのかな」
などと劣等感を抱いていないだろうか。
部活が選択制だったら抱く必要のない劣等感だ。

土日も部活に精を出す教員を見て,
『学校の先生は土日も部活やっていた。大人になったら土日も休みなく働くのが当然だ』
というブラックな考えが,子どもたちの中に無意識的に刷り込まれていないだろうか。

おおむね以上のようなことを校長に伝え,
最後に命令なのか/個人的なお願いなのかを尋ねた。

校長
「まあ,命令だな…」


「命令なら受けざるを得ません。ただし活動は勤務時間内に限ります」
と答えました。

ここまで書いて,大事なことを失念していた。
実は愛教労と県教委との今年度(今はもう昨年度か)の交渉で,愛教労の
「教員が部活動顧問を持たない自由はありますね?」という質問に対し,
県教委は「はい」と答えてるんですよ。3回も!

「県教委が『顧問を持たない自由はある』と答えてますよ!」
ともっと粘る方法もあったが,真摯に上記の話を聞いてくださったし,
今後の校長先生との関係もあるので,ヘタレですが妥協してしまいましたOTL

強硬派の人からは「ヘタレ!」と言わるかもしれませんが 笑
「部活動顧問拒否」を実行に移し,
「ひとり分会」で「ひとり校長交渉」らしきことを初めて行い,
思いのたけを校長先生に伝え,実質活動のほとんどない文化部顧問となり
負担は大幅減となりそうです。

しかーし!
私の負担が減ったということは,誰かの負担が増えたわけです。
部活動問題自体は何も解決していないのです。
でもこれで部活顧問者会議に出る権利は得られましたので,
今後は顧問者会議でモノを言っていこうと思います。

そしてヘタレなりに 闘った結果をこうしてツイッターで共有して,
誰かの参考や励みになれば,やったかいはあったと思います。
闘いはまだ始まったばかり。
来年度こそ「顧問拒否」が実現できるよう精進したいと思います。

何よりこの流れを生み出した「顧問拒否」界のジャンヌ・ダルク 笑
「真由子」さんはじめ,知教労のお仲間「一宮市教組」さんや,
その他ネット・ツイッターで部活問題を取り上げている個人・組織の皆様に
激烈感謝をささげ締めくくりたいと思います。ありがとうございました。